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楽しく生きていく

面白おかしく楽しく過ごす。知りたいことはメモってく。

リー・クアンユー 回顧録【上】

つい最近亡くなられ、シンガポールでは雨の中慰問の行列が途切れなかったという。

現在シンガポール東南アジア随一の経済拠点であり、日本人にとっての人気観光地である。
が、淡路島ほどの大きさの資源のない小国。それをここまで発展させた人、リー・クアンユーによる自伝

ちょっと長いですが、感想文です。

現実的で、頭が良い人の人生

優秀な人の人生を内側から覗いているような面白さ。緻密に社内政治をしつつ数字もあげているできる営業のようだ。
学生時代~日本占領時代~イギリス留学~弁護士時代~政党立ち上げ~独立運動と、どの時代も本人の「現実的に判断する」「何かを学び取る」、「絶対に負けない」という姿勢が貫かれている。「絶対に負けない」は、学生時代は「成績トップ」という意味で、ケンブリッジを主席で卒業している。すごい。ちなみに、シンガポール学生時代に知り合った奥さんは自分より成績が良かったそうで、「私より頭が良いのは妻だけ」と後年冗談を飛ばしたとか。

 

大戦中に英国が追放され日本軍の支配が始まると、日本軍の残酷さに憤りつつも、生活の為と割り切り3か月間で日本語を覚え、日本軍の下で働く(首相になってからも、演説の為に北京語と福建語を努力し習得する)。日本の戦況が悪化し物資が不足すると、闇市で宝石などを買い入れては売りさばき、一定の収入を確保。商売人としても十分財を成していたのではと思われる。

 

シンガポール・マレーシア及びボルネオ島を含む”マレーシア連邦”として英国から独立を得る為、様々な交渉をマレーシア側指導部と行っていくのだが、マレーシア側のトップで王族出身のラーマンについて、「女と馬を愛する、優雅な大公」と評しつつ、ゴルフに買い物や競馬に「金魚のフンのようについていき」「お揃いのベストを買った」と、合意を引き出すまで営業マンのように忍耐強くお伴をする場面が何度も出てくる。本当に現実的な人である。まぁ、最終的には決別し、回顧録では各人について書きたいことを暴露しているわけだが。

日本について

日本軍が華人に対して行った大量虐殺や、友人が受けた拷問などについてもページが割かれ、日本政府が謝罪から逃げ続ける姿勢を非難している。 また、慰安所に出来た長蛇の列についても驚きを持って記している。

一方、日本軍の支配下は、「どんな大学よりも、政治について私に多くの事を教えてくれた」「銃口の下で人々がどのように考え、行動するか」「厳しい支配の下では治安はとても良かった」と、後年の政権運営に役立ったと述べている。

日本人が知らない、マレー人と他民族の関係

マレーシア独立から2年後にシンガポールがマレーシアから分離独立した経緯は、「中国人とマレー人の間で対立があったからじゃないの」程度の知識しかなかった。しかし実際は、資源の少ないシンガポール側がマレーシアからの分離を望んだ事はなく、マレー人による政治支配継続を最優先とするマレーシア側指導部が、全ての民族の平等を求めるリー・クアンユーおよびシンガポール華人社会を脅威ととらえ、離婚を言い渡したリー・クアンユーの表現)ことが分かった。

マレーシアには現在「プミプトラ(土地の子)政策」という、マレー人優遇政策が存在する。前マハティール首相が取り入れた「中国人やインド人が経済力を持つなか、マレー人を自立させる為、大学や公務員採用など様々な面で優遇する」というものである。
結果、「マレー人は仕事しないのに優遇されている」というインド人や中華系からの妬みを受けている印象がある。

私はこれが「マハティール前首相の考えに基づく政策」だと思っていた。マハティール元首相は医師時代、「マレー・ジレンマ」という著書の中で「マレー人は遺伝的に劣っている、だから保護せねばならない」と論じ、発禁処分になったと聞いたからだ。
しかし、この本を読むと、マレー人が感じるインド人や華人への脅威は、もっと前から外国人が仕事を取っている」という空気が共有されていた事が分かった。

独立当時のマレーシア指導者ラーマンについて(以下引用)

「彼は、自分を含めマレー人の能力を低く見ていることを隠さなかった。(中略)『連中はビジネスができない。どうやったら儲かるか、まるでわからない。中国人は稼ぎ方を知っており、彼らの税金で政府の費用を賄うのだ。マレー人はあまり利口でなく、ビジネスも得意でないから、政府各部局や警察、軍隊に責任を持つべきだ』彼の哲学は(中略)マレー人を難民にしないことである。中国人やインド人と違って、マレー人は他に帰る国が無い。」と書いている。

 

回顧録(上)では、シンガポールがマレーシアから離縁されるまで。(下)では、切り離されたシンガポールが現在のポジションにのし上がるまでが描かれている。楽しみです。

(長文失礼しました・・)